Future Store“NOW”
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Future Store “NOW”
第3回推進協議会
開催レポート

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「Future Store “NOW”第3回推進協議会」が、2024年6月7日(金)にエッサム神田ホール(東京都千代田区)で開催されました。「Future Store “NOW”」は、活気あふれる人や街づくりのサポートに重要な「スーパーマーケットの未来」を、小売業様とソリューション企業が議論、研究し、展示会やウェブを通じて情報提供するプロジェクトです。今回は、「デジタル活用による生産性向上」をテーマに他業種の事例紹介を交えながら、具体的な施策や効果について詳しく掘り下げました。また、ソリューション企業の講演では、デジタル技術の導入がもたらす業務効率化の具体例や、顧客満足度の向上に繋がる取り組みを紹介。さらに、特定の課題にフォーカスした分科会の取組内容について共有しました。本レポートでは、講演やディスカッションの様子をレポートします。
※本レポートの内容は推進協議会実施時点の情報であり、各登壇者コメントの著作権は各社に帰属いたします。

はじめに

~ご挨拶・アジェンダ説明~

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一般社団法人全国スーパーマーケット協会 事業部 次長・富張哲一朗
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Future Store “NOW”事務局・三田裕道

第3回目となる推進協議会は、一般社団法人全国スーパーマーケット協会の事業部 次長・富張哲一朗の挨拶でスタート。今回のテーマである「デジタル活用による生産性向上」について、次のように述べました。

「デジタル活用による生産性向上はここ数年でよく聞かれる言葉ですが、重要なのは一過性ではなく継続的に取り組むことです。今日のディスカッションを通じて、DXやAIなどの技術導入を踏まえた5年後、10年後のスーパーマーケットの未来を見据えていきたいと思います」(富張)

Future Store “NOW”事務局・三田裕道(博報堂プロダクツ)は、今回の推進協議会のテーマに関して「賃金や人材不足、採用といった課題に対して、デジタル活用による“生産性向上”をテーマに、他業種や海外の小売業の事例をもとに議論を進めます」と説明しました。
今回のおもなアジェンダは、「他業種のデジタル活用事例として老舗旅館『元湯陣屋』の事例紹介」「SymphonyAI社による最新AIソリューションの紹介」「事前アンケートに基づく、今後の取り組みについてディスカッション」の3点です。

では、各登壇者の発表や意見交換の一部を順にご紹介していきます。

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他業種事例から考える デジタル活用による生産性向上のポイント

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有限会社アイ・キュー・ラボラトリ 大森秀政氏

最初のプログラムでは「デジタル活用による生産性向上のポイント」をテーマに、異業種の事例が紹介されました。有限会社アイ・キュー・ラボラトリの大森秀政氏が登壇。DX導入によって生産性向上を実現した老舗旅館「元湯陣屋」を実際に取材して分析したレポートが、大森氏から発表されました。

1918年創業の元湯陣屋は2009年、現経営陣が事業承継した時点で10億円の負債を抱えており、経営の立て直しが急務でした。そしてこの経営の危機的状況に対して、デジタル技術の導入・活用した経営改革を行い、生産性を大幅に向上させることで危機を回避しました。

まず、経営危機に陥った理由は、主に5つあります。

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「生産性の低さが負のスパイラルにつながっていた」と大森氏は指摘

(1)低い生産性
従業員が多くいるにもかかわらず、連携不足、シングルタスク状態であったため業務プロセスが非効率で、生産性の低さが慢性化していました。

(2)台帳による顧客情報の管理
顧客情報の管理は、フロントにある「紙の台帳」に依存しており、情報の共有や活用が困難で、迅速かつ効率的なサービス提供の妨げになっていました。

(3)属人化
「顧客情報がフロントにしか集まらない」「仕入れや調理などの重要な業務が特定のスタッフの経験や勘に依存している」など、俗人化によるスタッフ間の連携や新しいスタッフの育成が困難でした。これにより、業務の標準化が進まず、安定したサービスの提供が難しい状況でした。

(4)離職率
非効率な業務環境と役割分担の不明確さから、従業員のモチベーションは低く、離職率も低くありませんでした。新しいスタッフの育成とモチベーション創出が課題でした。

(5)競争力の低下
経済状況の悪化や観光業界の変動から旅館需要が低下している中、他の温泉地や宿泊施設との差別化も図れず競争力も低下。さらに施設の劣化やサービスの質の低下が顧客満足度の低下を招いていました。これにより、リピーターの減少、無理な割引による収益低下など、安定した経営が難しい状況に陥っていました。

デジタル活用による改善で、V字回復を果たす

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顧客情報をフロントの台帳からデジタルの一元管理に。これが好循環につながった

複合的な課題に対し、新しい経営陣がとったデジタル活用による改善策には、以下のようなものがあります。

<顧客情報の一元管理>
顧客情報をクラウドベースのシステムに移行し、全スタッフがリアルタイムで顧客情報にアクセスできるようにしました。これにより、個別対応が可能となり、顧客満足度が向上しました。

<業務プロセスの効率化>
各スタッフにタブレットとインカムを配布し、業務プロセスのデジタル化を進めました。これにより、情報の共有が迅速かつ正確になり、マルチタスク環境を実現。業務の効率化が図られました。

<属人化の解消>
仕入れや調理業務においてデジタルツールを導入し、経験や勘に頼らないデータドリブンな意思決定を行うようにしました。これにより、特定のスタッフに業務が依存することなく、安定した品質のサービスを提供できるようになりました。

<従業員満足度の向上>
デジタル化により業務負担を軽減し、従業員が働きやすい環境を整えました。シフト管理や研修の導入により、従業員のスキルとモチベーションの向上を実現しました。

<お客様体験の向上>
顧客情報の一元管理により、個々の顧客にパーソナライズされたサービスを提供することができるようになりました。チェックインやチェックアウトの迅速化により、顧客の利便性も向上しました。10年前は顧客単価が1泊9,800円ということもありましたが、現状は約6万円まで上がるなど、目に見える結果があらわれています。

デジタルを基盤にした「陣屋コネクト」で地域連携も推進

元湯陣屋は、これまでに培ったノウハウを活かし、「陣屋コネクト」というシステムを基盤に様々な展開を進めています。具体的には、以下の取り組みを行っています。

<系列旅館の展開>
元湯陣屋は「緑屋」という系列旅館を3施設展開しています。元湯陣屋の本部で経理を一括管理し、旅館運営は最小限のスタッフが担当。旅館では料理を作らず、地元の飲食店に送客する形を取っています。コストを削減しつつ、顧客に新しい体験を提供することを目指しています。

<モバイルコンシェルジュの導入>
「緑屋」では、チェックインから予約、アフターフォローまで一貫してスマートフォンで行える「モバイルコンシェルジュ」を導入。フロントを通さないチェックインや、フロントのない精算を実現しています。

<自治体との連携「里山コネクト」>
仕入れや調理業務においてデジタルツールを導入し、経験や勘に頼らないデータドリブンな意思決定を行うようにしました。これにより、特定のスタッフに業務が依存することなく、安定した品質のサービスを提供できるようになりました。

元湯陣屋のデジタル活用に対する会場からの感想・質疑応答

元湯陣屋の事例紹介を受けて、小売業様からは様々な感想や質問が寄せられました。
デジタル活用による情報共有の徹底の必要性を感じたと話す、A社様は元湯陣屋が抱えていた課題は、現在のスーパーマーケット業界でも発生していると指摘します。

「スーパーマーケットは、売上を上げ、利益を確保し、顧客を引き寄せることが最終目標です。そのためには、作業効率の向上が不可欠です。スーパーマーケットの青果、水産、食肉、デリカ、ドライブスルー、レジといった部門が縦割りの組織になっていることが効率の追求を妨げています。縦割り組織は、各部門が独立して動くため、全体の連携が不足し、情報共有が困難になります。一方、コンビニエンスストアは部門の縦割りがなく、従業員が掃除、品出し、調理などを行うマルチタスク体制を取っています。このマルチタスク化が効率向上に寄与しています。デジタル技術の導入は多くの効果をもたらしますが、目的を明らかにした上で、日々の運用を通じて効果が現れるようにしなければならないと感じました」(A社様)

また、B社様はスーパーマーケット各社も改善活動に取り組んでいるものの、壁にぶつかることがあると打ち明けます。

「デジタル活用に関して、従業員のマインドセットをどうやって変えるかが大きな課題となっています。新しい取り組みにどうやって賛同してもらうのかが悩みどころです。また、特定のスタッフに依存する属人化が問題となる一方で、そのスタッフが持つスペシャリティ(専門性)も重要な資産です。効率化を図りながらも、スペシャリティをうまく継承し、サービスのクオリティを維持するにはどうしたら良いのか、元湯陣屋の取り組みから得られるヒントはあるでしょうか?」(B社様)

この質問に対し、取材した大森氏からは、次のような回答がありました。

「経営者が交代し、世代も変わったため、大きな反発はなかったそうです。高齢化していた60代70代のスタッフが次第に退職し、若い世代に移行したことで、デジタル取り組みへの抵抗もなくスムーズに移行できたと聞いています。また、属人化の問題については、取締役には料理人も含まれており、サービスと食材の両面を重視したとのことです。情報を共有できることのメリットを強調することで、従業員の理解を得たようです」(大森氏)

元湯陣屋の事例は、デジタル技術を効果的に活用することで、生産性向上や顧客満足度の向上を実現し、経営危機を乗り越えることができることを示しています。スーパーマーケット業界でも同様の課題に直面している企業は多く、デジタル技術の導入が業務効率化やサービス向上にどのように役立つかを学ぶ良い機会となったようです。

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AIを活用した最先端のソリューションの紹介

今回、ソリューション企業として、小売企業および食品等のメーカー(CPG)向けの高度なAIソリューションを提供するSymphonyAI社が講演。同社は予測AIと生成AIを活用し、小売企業の効率的な運営を支援しています。現在33ヶ国に展開しており、小売企業では世界の売上上位50社のうちの30社、食品等のメーカーでは世界の売上上位25社を含む500社以上と取引があります。同社のソリューションの導入店舗数は2023年の実績で7万5000店舗以上にのぼります。講演では、同社アジア太平洋地域営業責任者のリチャード・ホール氏と、代理店のニッコーレン株式会社・代表取締役社長の本間謙太氏が登壇し、ソリューションの具体的な中身について説明しました。その一部をご紹介します。

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SymphonyAIのリチャード・ホール氏(左)とニッコーレンの本間謙太氏

予測AIと生成AIの組み合わせでリテール全般の業務を効率化

SymphonyAI社が提供するソリューションの特徴は、既存のデータを基に将来の結果や傾向を予測する「予測AI」と、分析結果をもとに新しい提案等を生成する「生成AI」の組み合わせで、業務の効率化と収益の最大化を図る点です。
「ID-POSやデータ管理、プロモーション効果の評価と最適化、カテゴリー・プランニング、サプライ・チェーン管理といった広い範囲でAIを活用した多数のソリューションを提供しておりますが、本日はその中でもカテゴリー・プランニングのソリューションの一部とデータ統合のソリューションについてご説明します」(本間氏)

<Microsoft Copilotとのコラボ>
SymphonyAI社は、昨年からMicrosoftのAI アシスタント『Copilot』に、自社のソリューションを実装しています。個々のソリューションのAIをCopilotと組み合わせることで、利便性と生産性を一層高め、エンド・ユーザーにとって使いやすいシステムとなっています。
「ユーザーの質問に対して迅速に回答を提供し、最適な行動を推奨します。週次報告などのレポート作成の手間を省き、リアルタイムでの迅速な意思決定を可能にします」(本間氏)

<クラスタリングと品揃えの最適化のソリューション>
従来の店舗タイプごとのクラスタリングよりも精緻なクラスタリング分析を行い、それをベースとして売上や収益等を最大化できる品揃えをAIが提案します。
「提案された品揃えに調整を加えた場合の売上や収益等へのインパクトも、瞬時に予測します。こうした調整を経て決まった品揃えをもとに、売上や収益等を最大化できるよう個々の商品の棚割上の配置を最適化します。この一連の作業がAIによって短時間で効率よく行われ、リアルタイムでの店舗対応を可能とします」(本間氏)

<棚割管理の効率化のソリューション:ストアインテリジェンス>
スマートフォン、タブレット、固定カメラのいずれかを用いて棚の写真を撮影し、棚に陳列されている商品の状況をAIがリアルタイムで分析します。欠品の指摘、棚割表と異なる商品配置の指摘、値札の欠落や価格のチェック、プロモーションの実施状況のチェック等を行い、店舗スタッフにすぐに指示を出します。
「これによって店頭での作業が従来に比べて大幅に短縮化され、生産性が向上します。米国のウォールマートでは、SymphonyAI社の『ストアインテリジェンス』というソリューションを順次各店舗に展開しております」(本間氏)

<データ統合のソリューション>
分散され、仕様が異なるデータを自動的に吸い上げ、一つのプラットフォームに一元化してデータを効率的に管理します。
「データ管理にかかる現場の負担が大幅に軽減され、生産性の向上に寄与します。また、このようなデータ・プラットフォームの構築は、業務全般をデジタル化する際の前提条件として必要だと考えております」(本間氏)

<売上・収益の増大、生産性の向上に関する効果検証>
最後に、当日紹介できなかったソリューションも含め、海外の小売企業で見られた売上の増加、収益やマージンの増加、在庫の削減、労働時間の削減による人手不足対応などについて、数字上の効果を示しました。

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「AIを活用するソリューションで一番効果のあるものの採用は、競争力強化に直結する」(リチャード氏)

こうした機能の活用によって「成長と競争力の強化につなげてほしい」と、リチャード氏と本間氏は強調します。

「AIは店舗運営、在庫管理、顧客サービスなど、さまざまな分野で活用が可能であり、その効果を最大限に引き出すための取り組みが必要です。欧米はAIの進展と実装が非常に早く、日本よりも進んでいると感じます。AIをいち早く取り入れることで、日本の小売企業もさらなる成長と競争力の向上を図ることができます。新しいシステムの導入に際しては、費用だけに目を向けるのではなく、ビジネスに与える影響、つまり売上や収益の増加、生産性の向上、在庫削減などの全体像を評価することが重要です。これにより、費用対効果をしっかりと見極め、最適な投資判断ができます」(リチャード氏)

「AIのソリューションを検討する際にはパイロット・プロジェクトで実際に効果を試してみることをお勧めします。SymphonyAI社ではサービスの本格導入前にパイロット・プロジェクトを提供しており、その効果に納得して頂いた場合に実際のソリューション導入に進む形を取っております」(本間氏)

小売企業におけるAI活用について質疑応答

SymphonyAI社の講演を受けて、会場の小売企業様からはたくさんの質問が寄せられました。その一部をご紹介します。

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リチャード氏は海外での実績をふまえて、日本の小売企業への応用も可能と話す

質問1:「生産性の向上」という大きなテーマに取り組む中で、限られた資源で導入した仕組みがうまく活用されず、定着しないという問題がある。これまで導入したものの一部は「宝の持ち腐れ」になっている。企業での導入事例について、浸透させるための支援や店舗での取り組みについてどうしていますか?

リチャード氏の回答:まず、オンライン講座やマニュアルなどで使い方を周知しております。さらに、現場でのトレーニングやコールセンターとオンラインによるサポートも合わせて提供しています。日本ではこれらのサービスを日本語で提供します。AIを使うことで生産性や収益性が向上し、その効果を実感し、さらに活用されることがポイントになります。また、チェンジ・マネジメントは新しいシステムを導入する際に重要なプロセスで、SymphonyAI社では現状の問題点の分析と目指すべき将来像の構築をサポートします。

質問2: プライベートブランドは商品の特性が多様ですが、それをどう判断し棚割りしているのでしょうか?

リチャード氏の回答:データベースに価格、添加物の有無、類似商品などを入力すると、売上と消費者行動のデータをもとにAIがこれらの各特性の相関関係や重要性を分析し、判断します。また、新商品の場合には、販売実績が積み上がってくるにつれてAIが自動的にアルゴリズムを補正していきます。

質問3:店舗ごとに売れる商品は異なりますが、レイアウトは店舗単位でしょうか?会社単位でしょうか?

リチャード氏の回答:棚割表の提案は店舗単位で行われます。海外での棚割表の大きな変更は通常年2回程度で、イベント時には個別店舗ごとに品揃えを最適化できるよう棚割表を調整しています。カテゴリーごとのクラスタリングで品揃えを最適化しているので、結果としてロス率も減少します。

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生産性向上に関するディスカッション

ディスカッションのパートでは、小売業様を対象に実施した「スーパーマーケットにおける、デジタルを活用した生産性向上に関するアンケート調査」の結果をもとに、DX推進アドバイザー・佐藤健一氏がファシリテーターを務め、活発な議論が交わされました。

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Future Store "NOW" DX推進アドバイザー・佐藤健一氏
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景況感について「好転」「増加」「上向き」という回答はなく、厳しい状況が見て取れる

佐藤氏は、まず景況感と売上の現状に関連するアンケート結果に着目。景況感については8社が「変わりない」と回答し、2社が「悪化している」と回答。売上については、3社が「5%以上の増加」、7社が「変わりない」との結果でした。今後の見通しについては、6社が「変わりない」、4社が「下向き」としています。

これに対し、昨対比で売上が増加しているという小売業C社様は、「一品単価の上昇と客数の増加が要因です。特に、業務店の顧客が戻ってきたことが大きく寄与しました。しかし、今後の見通しについては、競争の激化や値上げの影響を懸念しています」と話します。

また、D社様は「食品の値上げにより一品単価が上がった一方で、生活防衛のために購入点数が減少しています。一方、セミセルフレジやモバイル決済の対応で、効率化を図っており顧客満足度は向上しています。人手不足が結構深刻化しており、フルセルフレジの導入も進めています」とのこと。

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とくに「労働力管理/人財管理」「店舗運営効率化」「セキュリティ強化」はデジタル化が進んでいる

そして話題はデジタル技術の導入へ。在庫管理アプリの導入で、顧客に在庫状況をリアルタイムで提供しているE社は、「在庫管理アプリ導入後、100万人以上の顧客が登録。店舗側も在庫確認作業の負担が軽減され、効率的な運営が可能となりました」と言います。

オンライン注文システムとデジタルサイネージを導入したF社は、「導入初期の効果測定が難しい課題がありますが、顧客の行動特性を把握することで、マーケティング戦略の見直しを進めています」と新たな施策に舵を切ったことを明かしました。

マーケティングに関してSNSの積極的な活用を推進しているG社は、「30代40代の若年層の来店客を増やしています。商品を売るだけでなく、感動や経験、ストーリーを伝えるマーケティング手法を採用しています」と話します。

ディスカッションを通して、各社それぞれデジタル技術の導入や新たなマーケティング手法を駆使して、課題解決に取り組んでいる様子を窺えました。これからもデジタル技術の有効活用で、持続的な成長と発展を遂げていくことが期待されます。

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「Future Store “NOW”」分科会の報告と、今後の進め方について

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株式会社ラルズ 常務取締役 樋口裕晃氏(左)とFuture Store “NOW”事務局・篠田美浩
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「スーパーマーケットは、前年の実績を追いかける傾向がある」と樋口氏は言う

前回の協議会では、可視化された課題や注力領域に関して、小売業様と事務局がタッグを組んで深堀りする分科会の設置が発表されました。5つ設置された分科会のうち、今回は「惣菜」のカテゴリーについて、担当の株式会社ラルズ 常務取締役の樋口裕晃氏から発表がありました。

まず、樋口氏は、惣菜部門の課題として「当社は惣菜の売上構成比が低く、売上と利益率をもっと伸ばせると考えています」と説明。それらに対する具体的な数値を挙げ、具体的な取り組み方法について触れました。さらに、現状について、品揃えが顧客ニーズやトレンドと合っていないこと、商圏特性による変動、前年の取り組みに依存する傾向、高価格品と低価格品の二極化があると分析。

「惣菜は商圏特性で大きく左右される印象です。世帯によって大きく変わりますし、ピーク時間も商圏の状況で大きく変わります。また、デリカのバイヤーに質問すると『前年はこうやったからまずこれをやります』『前年はこれ売り過ぎたから、今年はちょっと変化球で違う商品でいきます』と基準が前年です。『前年の取り組みが間違っていたら?』と質問すると黙ってしまいます。さらに、高価格品と低価格品に二極化している顧客購買傾向への対応として、最近は美味しさの追求や健康への意識が強まっているので、美味しいもの・いいものを求める層と、低価格を求める層に分かれています。中間層が薄くなっていると感じています」(樋口氏)

これらの課題への解決策として分科会を通して、同社が検討している内容の要点は次のとおりです。

<売上構成比と利益率の改善>
POSデータや商品データ、レイアウトデータ、販売計画などのデータを共有し、現状を分析して適切な施策を検討する。また、デリカ部門での施策を一緒に取り組むことで、売上構成比と利益率を向上させる。「POSデータや商品データ、レイアウトのデータ、販売計画等を進めていきたい。

<過去の取り組みに依存する傾向>
デリカバイヤーが前年の取り組みに依存しているため、時代のニーズに対応できていない。データと数値に基づく施策を導入し、前年の取り組みを見直して現代のニーズに適応させる。また、勘と経験だけでなく、データと数値に裏付けされた策を講じる。

<高価格品と低価格品の二極化への対応>
顧客購買傾向が高価格品と低価格品に二極化しており、中間価格帯の商品が減少している。高価格品と低価格品の両方を適切に取り揃え、顧客の多様なニーズに対応する。また、競合店への対策を強化する。

<効果的な仕組み作り>
継続的に自社で活用できる仕組みがないので、一つの店舗で効果的な仕組みを確立し、それを他店舗に横展開することで継続的に活用できる仕組みを作る。また、少ない労力で最大の効果を得るために、各社の専門的なツールを用いて現状分析と施策の整理を行う。

樋口氏の報告は各企業が直面している共通の課題に対して実践的な解決策を示しており、その詳細な分析と戦略は、多くの企業が自社の戦略を見直し、改善を図る際の指針になりそうです。

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課題解決に向けて、分科会では継続的な取り組みを実施

また、今後の分科会の進め方について、事務局の篠田美浩から次のような説明がありました。

「各協賛企業が持つデータを活用して現状を把握し、必要な施策を検討しながら分科会で具体的な取り組みを展開します。店舗での実証も行います。2025年2月のスーパーマーケットトレードショーでの発表を目指し、スケジュールを組んで進行します」(篠田)

分科会を通じたノウハウの共有は、業界全体の競争力向上と持続的な成長につながるでしょう。今回の分科会は、惣菜の課題解決にフォーカスしましたが、今後は協賛企業との連携を強化し、現状分析と課題解決に向けた取り組みを進めて成果を上げることが期待されています。

まとめ

~第3回 推進協議会を終えて~

第3回推進協議会では、講演に加えて、参加者の皆様との対話が増え、意見交換や質疑応答を通じて、より双方向的なコミュニケーションが実現しました。小売業者が直面する複雑な課題を深く理解し、協議会で得られた知見と提案をもとに、次の一歩を踏み出す準備が整いました。今後は分科会も開始され、より深いディスカッションや提案を基に、具体的な行動計画を立て、実行に移していく予定です。

次回は、2024年9月の開催を予定しています。多くの小売業の皆様、ソリューション企業様のFuture Store “NOW”ご参画をお待ちしております。

実施概要

日時:
2024年6月7日(金) 13:00~17:05
場所:
エッサム神田ホール2号館
テーマ:
デジタル活用による生産性向上
内容:
1. 他業種のデジタル活用による生産性向上事例~老舗旅館 元湯陣屋の事例紹介~のご紹介
2. SymphonyAI Retail CPGのご紹介と​AIを活用した最先端のソリューションについて​のご紹介
3. 小売業様による生産性向上についてディスカッション
4. 株式会社ラルズ樋口様、FSN運営事務局篠田より分科会と取り組みの方向性のご報告


参加企業/参加者

小売企業様

  • 株式会社いちやまマート 様
  • 株式会社ウジエスーパー 様
  • 株式会社G&Lマート 様
  • 株式会社大創産業 様
  • 富士シティオ株式会社 様
  • 株式会社ラルズ 様
  • ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社 様

スポンサー企業様

  • ゼネリックソリューション株式会社 様
  • 株式会社くふうジオデータ 様
  • 株式会社寺岡精工 様
  • 日鉄ソリューションズ株式会社 様
  • ピープルソフトウェア株式会社 様
  • 楽天ペイメント株式会社 様

オブザーバー参加企業様

  • 株式会社Wiz 様
  • 技研商事インターナショナル株式会社 様
  • 株式会社システム計画研究所 様
  • 登壇者:
  • ファシリテーター:
  • 主催:
  • FSN運営事務局:
  • 有限会社アイ・キュー・ラボラトリ​ 大森 秀政 様
    ニッコーレン株式会社 代表取締役社長 本間 謙太 様
    SymphonyAI アジア太平洋地域 営業責任者 リチャード・ホール 様
    株式会社ラルズ 常務取締役営業本部長兼販売統括部担当 樋口 裕晃 様
  • DX推進アドバイザー 佐藤 健一氏
  • 一般社団法人全国スーパーマーケット協会
  • 株式会社博報堂プロダクツ
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