Future Store“NOW”
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Future Store “NOW” 2023-2024 オープンセミナー
開催レポート

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「Future Store “NOW” 2023-2024オープンセミナー」が、2023年11月8日(水)東京コンベンションホール(東京都中央区)にて開催され、小売業様、ソリューション企業様計32社50名にご参加いただきました。「環境の変化・買物行動の変化を捉えた小売業の成長」をテーマに、第1部は有識者による特別講演、第2部は様々な業種の方々に登壇していただくパネルディスカッションというプログラム構成。その後、小売業様、ソリューション企業様、登壇者が参加し、第3部の懇親会が行われました。今回は、第1部と第2部を中心にセミナーの様子をレポートします。
※本レポートの内容はオープンセミナー時点の情報であり、各登壇者コメントの著作権は各社に帰属いたします。

はじめに

~アフターコロナのスーパーマーケットと関連企業の協力体制を強化~

セミナーは、Future Store “NOW”事務局・三田裕道(博報堂プロダクツ)の進行でスタート。プログラムの紹介のあと、一般社団法人全国スーパーマーケット協会の事業部 次長・富張哲一朗から挨拶がありました。Future Store “NOW”プロジェクトの立ち上げ経緯や小売業の変化への対応、新型コロナウイルス蔓延の影響などに触れ、アフターコロナを見すえて、スーパーマーケットや関連企業の協力の重要性をアピール。「引き続き年間を通して小売業の正会員の皆様に参画いただき、正会員の各社様をご支援くださるソリューション企業の皆様にも今後ともに多くの参加を募りながら、このプロジェクトを進めていければ」と話しました。

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「セミナーから何か持ち帰っていただき、今後の流通を皆様と一緒に作り上げたい」(富張)
第1部

アフターコロナにおける流通業界の目指すべき方向性について

第1部は明治大学 専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 橋本雅隆教授による講演です。テーマは、「アフターコロナにおける流通業界の目指すべき方向性について」です。
2023年3月、経済産業省は、「新流通ビジョン」として「物価高における流通業のあり方検討会最終報告書~よみがえるリアル店舗~」を発表。経済産業省が流通ビジョンを示すのは15年ぶりのこと。橋本教授は、この「新流通ビジョン」に対して、専門領域である物流やサプライチェーンマネジメントの視点から講演されました。

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橋本教授は「スーパーマーケット等ワーキンググループ」座長、「物価高における流通業のあり方検討委員会」委員を務める

橋本教授は、「新流通ビジョン」が示した経済の地政学リスクや物価高、物流の問題に対処する手段として、DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性を強調。「人手不足や物流の課題、エネルギーコストの上昇などのリスクが増大している中で、経営資源の活用効率向上が重要である」と橋本教授。特に、世界でも初めて行政がリードして取り組んだ「フィジカルインターネット実現」のための2040年までのロードマップに沿って、我が国の流通におけるDXの推進が重要であると指摘します。

橋本教授が挙げたコロナ終息後の課題は、小売業におけるエネルギーコストや食品関連の価格上昇、人手不足、人件費上昇など。こうした課題を背景に、実質賃金の低下や消費者の購買力の減少が懸念されています。また、消費者の行動が変化する中で、DXを前提とした小売ビジネスの進化が重要度を増すと橋本教授は話します。そのうえで、橋本教授は「新流通ビジョン」の柱として、経営資源の刷新と合理化を進める「DXの推進」、サプライチェーンの連携統合を通じた「物流の効率化」、地域に根差して見直す「小売りの在り方」、この3点を提案しています。

さらに、橋本教授は、小売業の生産性に焦点を当て、ROIC(投下資本利益率)の重要性を強調。ROICは、企業が投じた資金をどれだけ効率的に利益に転換できるかを示す指標。「従来は売上高や経費率が注目されていたが、ROICの向上がこれからは必要」(橋本教授)
ROICは、全産業の平均が6.2%である中、小売業は4.9%と低く、国際的にも日本の産業のROICが低いと指摘されています。「この指標こそ商売が儲からない効率の悪さを示していて、その改善のためにDX導入は必要」と橋本教授は続けます。

小売業におけるDXについては、フロントエンドDX(店舗)とバックエンドDX(サプライチェーン)に分類、そして3層構造(コミュニケーションプロセス、オペレーションプロセス、ロジスティクスネットワーク)でDXをとらえるべきだと橋本教授はいいます。「その前提となるのがオペレーションプロセス。ここを変えていかないとDX化はなかなか難しい」(橋本教授)
その例として、販管費が9%で動いているスーパーの事例を紹介。業務プロセス改革の徹底が重要であると指摘します。また、物流においては、2024年問題に起因する課題が議論され、首都圏SM(スーパーマーケット)物流研究会が発注納品リードタイムの見直しや加工食品の納品期限の緩和、荷役時間の短縮等の検討を進めていることが紹介されました。

「小売業は社会に不可欠なインフラであり、地域の流通に従事する人々の働きがいや価値を最大限に引き出す必要がある」と橋本教授。また、物価高や人手不足といった危機を、むしろ「変化のラストチャンス」と捉え、これに対処するための連携が必要ともいいます。「自社だけで解決できない課題には、製・配・販と連携し、地域ネットワークを活用して取り組む姿勢が大事」(橋本教授)

橋本教授は次のように講演を締めくくりました。「地域の課題、現場の困りごとを持ち寄り、それで協働の取り組みを現場から立ちあげてほしい。行政の支援も視野に、地域で最先端のDXや知見を組み合わせて小売チェーンの新しいビジネスモデルを構築する。この協働の取り組みを皆様と一緒に進めたい」

第2部

コロナ禍での取り組み紹介とアフターコロナにおける現実について

第2部は、様々な業種で活躍している方々によるパネルディスカッションをお届けしました。登壇したのは、株式会社サンドラッグ 執行役員EC事業長・田丸知加氏、ME Group Japan株式会社 副社長・和田浩二氏、アマゾン ウェブサービス ジャパン合同会社 シニア事業開発マネージャー・松本鋼治氏の3名です。

DXで効率化、組織や仕組みの無駄を省く

最初のプレゼンテーションは、サンドラッグの田丸知加氏。サンドラッグはドラッグストア業界で65周年を迎え、売上6900億円、1300店舗以上を有し、Eコマースに力を入れている企業でもあります。田丸氏は、入社してからの2年間でサンドラッグのDXに着手し、Eコマースのリプレースを行い、ユニファイドコマースを導入したことを紹介しました。その中で、「ShopifyによるEコマースのリプレースは、リアルとネットの接点を一元化し、顧客の購買履歴を統合できるようになった」と説明します。

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田丸氏は、Amazon ジャパン出身。サンドラッグへは2021年11月から

また、DX化の過程で、組織や仕組みの無駄削減のために、コンポーザブルアプローチ(複数の要素を結合・構成する方法)を取り入れ、縦割りの構造を打破して統合を進めたそうです。これによって、「時代の変化に柔軟に対応でき、無駄が削減される」と田丸氏。「例えば、カスタマーサービスも かつてはリアル店舗とEコマースでは別々のものを使っていました。コンポーザブルアプローチによって、それを解消して、管理する部署を一つにまとめ、サービスも仕組みも一つにまとめました」(田丸)

田丸氏は、自身の培ってきた業務改革やデジタル戦略の経験を生かし、これからもサンドラッグをより効率的かつ柔軟に変革していくと語ります。最後に、「DXにおいては組織や仕組みの見直しと同様に、時代の変化に迅速に対応し、先手を打つことが重要である」と締めくくりました。

新規事業は、DXの観点で属人化を排除

続いてのプレゼンテーションは、ME Group Japan和田浩二氏。同社が主力とする自動証明写真機事業の変革について語りました。ME Group Japanは、自動証明写真機を主力とする英国企業の日本支社であり、日本国内で14,000台以上の証明写真機を展開。和田氏は、「自動証明写真機の需要が減少している中、新たな展開としてフード事業に注力している」と話します。

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和田氏は、新規事業として無人のジューススタンドのビジネスを立ち上げた

ME Group Japanは無人のジューススタンドを展開。生搾りのフレッシュジュースを提供しています。和田氏は、「従来の自動販売機にはないエンターテインメント性を取り入れ、商品の新鮮さや品質にこだわりながら、環境にも配慮した取り組みを行っている」とのこと。具体的には、FSC認証(持続可能な森林活用・保全を目的とした国際的認証制度)を取得した紙カップやリサイクルペット使用のフィルムの導入、食品残渣の再利用などが挙げられます。

また、和田氏はDXの観点から、顧客データや販売データの分析について、「商品開発や自動販売機の巡回ルート最適化において、AIを活用したデータ処理と標準化を進めている」といいます。「DXにおいては、属人的な業務を最小限に抑え、データを有効に活用することが重要」(和田氏)

和田氏のプレゼンテーションからフード事業に転換し、デジタル技術を積極的に活用しているME Group Japan 姿勢が浮かび上がりました。

企業の成長を左右するデータの蓄積と連携の重要性

最後に登壇したのが、アマゾンウェブサービスジャパンの松本鋼治氏。松本氏は、シニア事業開発マネージャーとして、DXの取り組みに焦点を当て、特にデジタルマーケティングのソリューション展開について紹介しました。
松本氏は、データの重要性に焦点を当て、データ駆動型企業の成功例を紹介。データ活用が企業の成長に大きな影響があることを指摘。「実際にデータ駆動ではない企業と比較すると、8.5倍もの確率で20%以上の成長が実現する。これがデータ駆動型企業の特徴です。もちろん 小売や卸など、流通業界でもこの傾向は共通します」(松本氏)

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松本氏は、デジタルマーケティングのトレンドを軸にデータの重要性を説いた

また、流通業界でデータ活用が求められる中、データの保護とプライバシーの重要性にも言及。個人情報保護法の強化やプラットフォーマーの規制の変更などが進んでおり、そこに対処しながらデータを効果的に活用することが必要となってきます。「セキュリティを守りながら、どんどん増えてサイロ化したようなデータを、うまく共有する仕組みを使うことで、ますますDXは加速できる」と松本氏はいいます。

さらに、「データ蓄積だけでなく、データをつなげて活用することが重要」と松本氏。「データクリーンルーム」のようなサービスで、企業間で安全かつ機密性の高い状況でデータを共有できるようになってきているそうです。

松本氏は、データ連携の重要性とそのトレンドに焦点を当て、DXがどのように進展しているか、AWSの導入事例をふまえて紹介。「例えば、自社データのみでは顧客行動が判読しづらかった状況に対して、AWS Clean Roomsのようなサービスを駆使することで、他社とのデータ連携を行い、より解像度高く詳らかにすることが出来る。そんな世界がクラウドによって身近になってきているのです」(松本氏)

パネルディスカッション

続いて、3者によるパネルディスカッション。アフターコロナにおけるセミナー参加者へのアドバイスをそれぞれの立場で発表しました。

サンドラッグの田丸氏は、お客様や働き手の減少をふまえて、「流通がモノを買う場所から体験やコトを買う時代に移行しており、他業種との協業が必要」と考えを示しました。
「食品を主体とするスーパーマーケットは、食と生涯にわたる顧客関係を築くポテンシャルが高く、欧米ではプラットフォーム化やヘルスに関する動きが進んでいる」と田丸氏。一方、ドラッグストアは健康に関するスペシャリストを抱えているため、他業種、とくに食に強いスーパーマーケットとヘルスに関する他業種との協業が重要になってくるといいます。この先は、「業界の壁を超えた協業が重要」だと結論づけました。

ME Group Japanの和田氏は、「小売業においては共通のプラットフォームを構築し、店舗ごとの課題や改装ポイントを標準化して活用できるような取り組みが必要」だと語ります。「物流はもちろん、顧客の声などのバックオフィス機能を小売業が協調し、標準化することによって小売業全体が進化し、より効果的な経営と運営が可能になる」との立場を示しました。
また、プライベートブランドの商品開発においては、「共通仕様や共同調達を通じて原価削減が可能であり、そのために地域やコミュニティとの連携強化も重要」と和田氏。共通原料の集約や統一された表示、共同調達などの取り組みで、コスト削減が実現でき、価格競争力の向上が期待されるといいます。
また、無人販売モデルにも触れ、少子高齢化や店舗の減少に対応するためには、「無人販売機を活用して新たなビジネスモデルを検討する必要がある」と和田氏は続けます。無人販売の例として、冷凍・冷蔵・常温商品の自販機が増加しており、各地域で展開されている点を紹介しました。

アマゾン ウェブサービス ジャパンの松本氏は、自社の実績から流通企業のデータ駆動について、その重要性を改めて語ります。「データの駆動にはさまざまな仕組みが必要。例えば、AWSなら、IoT、マシンラーニング、人工知能など多様な仕組みを提供しています。これにより、お客様のビジネスのバリューチェーンに合わせた形でサポート可能です」(松本氏) 「更にAWSは、顧客企業同士のコラボレーションや、ビジネス全般のDXにも注力している」と松本氏。今後ますますクラウドの重要性が増していく中、顧客起点のアプローチを行い、ITのみならずビジネスのパートナーとしてのAWSとして、流通企業の支援を行っていきたい、と語りました。

第3部

今期プログラム紹介&懇親会

パネルディスカッション終了後、このオープンセミナー以降に行われるプログラムの詳細が紹介されました。

Future Store “NOW”の活動は大きく分けて三つあります。 まずは、「推進協議会」です。この会議は小売業の皆様を取り巻くも課題を話し合い、さらに課題解決の方法をFuture Store “NOW”にご参加のソリューション企業の皆様と協議しながら検討する場を目指します。 次に、「分科会」です。こちらは推進協議会で議論された内容について、実際の店舗において実証実験を行い、実用化に向けた取り組みを行っていくことを目標としています。 三番目が、「スーパーマーケット・トレードショーへの出展」です。2024年2月に開催されるスーパーマーケット・トレードショーにおいて、推進協議会と分科会での取り組み内容の発表、また参画されているソリューション企業様を紹介するブースを展開。Future Store “NOW”の活動を対外的に発信して、小売業界全体の発展に寄与していく取り組みとして注力します。

その後は、立食形式での懇親会では、参加者や関係者が交流。名刺交換はもちろん、本日の講演やパネルディスカッションに関する意見交換など、活発なコミュニケーションの場となりました。

まとめ

~Future Store “NOW” これからの取り組み~

今回の「Future Store “NOW” 2023-2024オープンセミナー」を皮切りに、Future Store “NOW”は再始動します。Future Store “NOW”2023-2024では、小売業・ソリューション企業による未来研究として、セミナーであげられたような小売業界に起きている様々な課題に取り組みます。例えば、人口減少や少子高齢化、物価高騰によるコスト高、あるいは買物のデジタルシフトや消費価値の多様化などが考えられます。それらの背景にある環境の変化・買物行動の変化をふまえて、「小売業とソリューション企業がタッグを組み、課題解決を通して小売業の成長につなげていく」をテーマとして推進してまいります。
次回は、2024年1月26日(金)にテーマを買物行動の可視化と分析(仮)として、推進協議会を予定しています。
多くの小売業の皆様、ソリューション企業様のFuture Store “NOW”ご参画をお待ちしております。

実施概要

日時:
2023年11月8日(水)
場所:
東京コンベンションホール
テーマ:
環境の変化・買物行動の変化を捉えた小売業の成長
内容:
1部:
特別講演「アフターコロナにおける日本の流通業界の方向性について」
2部:
パネルディスカッション 「コロナ禍での取り組み紹介とアフターコロナにおける現実について」
3部:
懇親会/名刺交換会

参加企業/参加者

小売企業様

  • 株式会社アークス 様
  • 株式会社エムアイフードスタイル 様
  • 株式会社サカガミ 様
  • 株式会社三徳 様
  • 株式会社G&Lマート 様
  • 株式会社ベルジョイス 様
  • ヤオマサ株式会社 様
  • ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社 様
  • 株式会社ラルズ 様

ソリューション企業様

  • 株式会社アットテーブル 様
  • アララ株式会社 様
  • 伊藤忠テクノソリューションズ 様
  • Wolt Japan 株式会社 様
  • 株式会社unerry 様
  • エスイーエス・イマゴタグ・ジャパン株式会社 様
  • Nアソシエーション合同会社 様
  • 株式会社広済堂ネクスト 様
  • ゼネリックソリューション株式会社 様
  • ソニーマーケティング株式会社 様
  • トレジャーデータ株式会社 様
  • 長瀬産業株式会社 様
  • 日本経済新聞社 様
  • パナソニック産機システムズ株式会社 様
  • ピープルソフトウェア株式会社 様
  • 株式会社FEZ 様
  • フクビ化学工業株式会社 様
  • 富士ソフト株式会社 様
  • ブルーチップ株式会社 様
  • 株式会社プレイド 様
  • 楽天ペイメント株式会社 様
  • レンゴー株式会社 様
  • ONES JAPAN株式会社 様
  • 講演者:
  • 登壇者:
  • ファシリテーター:
  • 主催:
  • FSN運営事務局:
  • 明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授
    橋本 雅隆 専任教授
  • 株式会社サンドラッグ 執行役員 EC事業長
    田丸 知加氏
    ME Group Japan 株式会社 取締役副社長
    フード事業部ゼネラルマネージャー
    和田 浩二氏
    アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
    事業開発本部, Digital Marketing Solution シニア事業開発マネジャー
    松本 鋼治氏
  • リテール総合研究所 竹下 浩一郎氏
    /DX推進アドバイザー 佐藤 健一氏
  • 一般社団法人全国スーパーマーケット協会
  • 株式会社博報堂プロダクツ
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